陸のアブドッラーと海のアプドッラー(5) [千一夜物語]
漁師は走って走って、とうとう地面に倒れて気絶してしまいました。意識が戻って目を開くと、目の前に自分の網があるのです。海からあの男がついて来たのでした。
漁師はまた恐ろしくなって走り出そうとしたとき、男がこういうのが聞こえました。
「善き人よ、怖がらないでください。わたしもあなたと同じく人間だし、あなたと同じく神を崇拝しているのです。ただ、あなたとわたしの違うところは、あなたは陸で暮らしているが、わたしは海で暮らしているというところです。」
これを聞いて漁師は怖くなくなり、気持ちが落ち着きました。そして男の名前を聞いたところ、男は
「わたしは海のアブドッラーと申します。あなたは?」と答えました。
「わたしもアブドッラーです」と漁師は言いました。
海のアブドッラーは言いました。
「ではあなたを陸のアブドッラーと呼びましょう。今から友達付き合いをしましょう。あなたは毎朝陸の上になる果物を持ってここへ来てください。そのお礼に海の宝石をお好きなだけ差し上げますから」
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