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陸のアブドッラーと海のアプドッラー(10) [千一夜物語]

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 友達に歓待してもらった後には、陸のアブドッラーは家族の元へと帰り、海のアブドッラーは海へと潜って行きました。
 子ども達と奥さんの元へ帰った陸のアブドッラーは大臣職を続け、公平で知られ、貧しいものに寄り添い、王様が亡くなるまでこの国の王位の代理人であり続けました。
 晩年には、陸のアブドッラーは海岸へ行き、友人である海のアブドッラーを呼び、メッカ巡礼へと誘いました。これで信仰が完全なものとなり、神がご満悦くださり、贖罪をさせてくださいました・・・」

 ここでシャハラザードは話を終えました。シャフリヤール王は、この誠実と正直と我慢強さを物語る不思議な話を好ましく思い、知識を増やし、心に哀れみを生じさせ、恩寵が長く続くような新しい話を望みました。
 シャハラザードは答えました。「仰せのままに」

 雄鶏が時をつくり、朝がやって来て、鳥が歌い始めました。
 シャハラザードは翌日まで話をやめ、シャフリヤール王は約束を守り、待つのでした。
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陸のアブドッラーと海のアプドッラー(9) [千一夜物語]

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 海のアブドッラーは友達のパン屋のことを忘れてはいませんでした。そこでパン屋へと行ってみましたが、店が閉まっているではありませんか。病気で家で臥せっていたのです。
 そこで医者を呼び、神のおかげで病気がよくなると、王様の宮殿へとパン屋を呼びました。陸のアブドッラーは王様に、この友人がしてくれたことを語り、大臣の位を与えてやってくださいとお願いしました。王様はその願いに答えてやり、また、その誠実さ、正直さに感謝の意を述べました。
 毎朝、陸のアブドッラーは海岸へ出かけ、友人たる海のアブドッラーに果物を持って行き、貴重な宝石をもらってきます。
 ある日、海のアブドッラーは、海の不思議を見せようと陸のアブドッラーを呼びました。 陸のアブドッラーは着ているものを脱ぎ、水や攻撃をしてくる魚から守ってくれる特別な香油を体に塗り、頭には呼吸のできるマスクをかぶり、そうして友人と共に海の底へと潜って行きました。そこで不思議なものを見たのですが、こんな奇妙なものが見られたのも神のおかげです。
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陸のアブドッラーと海のアプドッラー(8) [千一夜物語]

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「この宝石はどこで手に入れたのかね?おまえは貧しい漁師であるのに」
 そこで陸のアブドッラーは王様に話をしました。王様は話を聞いておおいに驚き、また、漁師が正直者であることを知りました。そしてよこしまな商人を牢に入れるように命じました。漁師を側へと呼び寄せると、その誠実さを讃え褒美を与えました。王様は言いました。
「もしこの宝石を売ろうと思うことがあれば、わたしのところへ持って来なさい。買い上げよう」
 この申し出に喜んだ漁師は、明日持ってまいりますと約束をしました。翌日にはかご一杯に宝石を入れて王様の宮殿に出かけました。王様はそれを見て驚いて言いました。
「善き人よ、おまえの正直さ、誠実さを好ましく思うぞ。そして泥棒や敵がおまえを狙わないかと心配になってきた。家族と宝石と一緒にわたしの宮殿へ引っ越して来てくれないだろうか。おまえを王国の大臣に任命しよう、そしてわたしの後継者となってくれないか?」
 陸のアブドッラーは話を受け、家族とともに王様の宮殿へと引っ越しました。そして大臣の着物を着ると、人々を公平に扱い、貧しい人たちのために自分の富を費やすようになったのです。
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陸のアブドッラーと海のアプドッラー(7) [千一夜物語]

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 ところがその商人は意地悪で嘘つきで、不誠実な悪い人間であったので「こんな貧しい男がどうやってこんな宝物や宝石を手に入れたのだろう?この男を騙して宝石を手に入れよう」と考えたのです。
 宝石商は漁師に言いました。
「おたくにはこんな宝石がたくさんあるんですか?」
 漁師は答えました。
「神様のお陰で、たくさんたくさんあります」
 ここで宝石商は通りで警官を呼びつけて言いました。
「この男は卑劣で大変悪い泥棒です。王様の金庫からこの宝石を盗み出したんです」
 そこで警察は陸のアブドッラーを逮捕し、王様のもとへと連れて行きました。商人は宝石を手に持って着いてゆきます。王様はその宝石を見てとても驚いて漁師に尋ねました。
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陸のアブドッラーと海のアプドッラー(6) [千一夜物語]

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 二人はそんな約束を交わしました。
 海のアブドッラーは陸のアブドッラーに珍しい海の宝石をプレゼントすると、また海へと潜っていきました。
 帰り道、陸のアブドッラーは友人のパン屋の前を通りがかり、自分に何が起こったかを知らせ、珍しい宝石をたくさん渡すと、パン屋は喜んでお礼を言い、子ども達と奥さんに、パンと食べるものを買って帰りました。
 翌朝、陸のアブドッラーは海岸へ出かけて、友達の海のアブドッラーを呼び出すと、大きなかごに一杯の果物を差し出しました。海のアブドッラーは、水が中に影響しない袋に果物を詰め替えると、陸のアブドッラーのためにそのかごを珍しい宝石で一杯にしてやりました。
 陸のアブドッラーはそのかごを持って帰り、奥さんに何が起こったかを話しました。それから宝石をいくつか持って宝石商の親方のところに出かけると、それを売りたいと広げてみせました。
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陸のアブドッラーと海のアプドッラー(5) [千一夜物語]

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 漁師は走って走って、とうとう地面に倒れて気絶してしまいました。意識が戻って目を開くと、目の前に自分の網があるのです。海からあの男がついて来たのでした。
 漁師はまた恐ろしくなって走り出そうとしたとき、男がこういうのが聞こえました。
「善き人よ、怖がらないでください。わたしもあなたと同じく人間だし、あなたと同じく神を崇拝しているのです。ただ、あなたとわたしの違うところは、あなたは陸で暮らしているが、わたしは海で暮らしているというところです。」
 これを聞いて漁師は怖くなくなり、気持ちが落ち着きました。そして男の名前を聞いたところ、男は
「わたしは海のアブドッラーと申します。あなたは?」と答えました。
「わたしもアブドッラーです」と漁師は言いました。
 海のアブドッラーは言いました。
「ではあなたを陸のアブドッラーと呼びましょう。今から友達付き合いをしましょう。あなたは毎朝陸の上になる果物を持ってここへ来てください。そのお礼に海の宝石をお好きなだけ差し上げますから」
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陸のアブドッラーと海のアプドッラー(4) [千一夜物語]

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 漁師はこんな状態が40日続きました。海に出かけては何度も何度も網を投げ入れますが、石と海藻の他何もかかりません。
 41日目、いつものように目を覚ました漁師は悲しみにくれていました。毎日夕方になるとパン屋のところへ行って、欲しいだけのパンとお金をもらうのに、パン屋は微笑んで歓迎してくれるのです。漁師は1時間も悲しみにくれながら過ごしていました。そこへ奥さんがやって来て、母親のように慰めてくれながら言いました。
「神様の手にゆだねましょう。今日神様が魚を与えてくだされば、今までしてくださったことのお礼にパン屋さんに全て差し上げましょう」
 漁師は奥さんに言いました。
「神のご意思ならそうしよう」
 漁師は急いで海へと出かけ、パン屋に借りたものを返すために魚を与えてくださいますようにと神に祈りながら網を打ちました。
 やがて網が重くなったのを感じ「また石と草だろう・・・」と言いました。
 網を開いて見ると、突然、人の姿をしたものが現れました。それは頭を動かして漁師を見ると、彼に向かって笑ったのです。
 漁師はこの男を見て怖くて震え上がり、網を海岸に放り投げたまま、すぐに逃げ出しました。
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陸のアブドッラーと海のアプドッラー(3) [千一夜物語]

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「ワシの網を質草としてもらってくれんかね。それで家にもって帰るパンが欲しいんだ」
 パン屋のアブドッラーは答えました。
「友よ、そんなことを言ってはいけない。私たちは友達だろう。どうして君の魚を捕るための網を受け取ることなんてできるかね。いるだけのパンを持って行きなさい。それから食べるものを買うお金も。そして家に、息子のところに帰るんだよ。悲しんでいてはいけない。神が君に恵みを与えてくださるし、代わってくださるから」
 漁師のアブドッラーは十分にパンと、欲しいだけ食べるものを買えるお金を受け取ると、神と、パン屋の友人に感謝しながら家へと帰ったのです。
 次の朝、漁師は海へと出かけ、神へ呼びかけました。
「神よ、私に恵みを与えてください。パン屋の友人への借りが返せますように。友人が私に腹を立てませんように」
 それから海へと網を投げましたが、やはり何も採れません。そして結局昨日と同じようなことになってしまいました。
 パン屋の前を通り過ぎるときには、漁師は、友達が自分を見て、貸したものを返せと言い出さないようにと急いで去って行きました。
 ところがパン屋は漁師を見て気の毒に思い、急いで追いつくと、パンとお金を渡して言いました。
「気にしてはいけない、兄弟。恥ずかしがらなくてもいい。お金は神が与えたもうたものだ。私は、神が君に恵みを与えて暮らしを楽にしてくださるまでお金を取ろうとは思わないよ」
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陸のアブドッラーと海のアプドッラー(2) [千一夜物語]

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 網から石や海藻を取り除いくと、もう一度投げました。しかし再び石や海藻がたくさんかかるだけでした。漁師のアブドッラーは、一日中網を投げては何も採れないということを繰り返し、切なくなってしまいました。やがて、希望もなく、家に帰ろうと心に決めたのでした。
 家に帰る途中、息子と奥さんのことを考えていると、やがて友人の、パン屋のアブドッラーの店の前へとさしかかりました。パン屋である友人の店の前にはパンを買う人で一杯です。
 網を運んでいた漁師のアブドッラーは、人々が焼きたてのパンを持っているのを見て空腹を覚え立ち止まりました。目から涙があふれました。足に痛みも感じます。
 パン屋のアブドッラーはそれを見て、店に招きました。
「どうしたのかね、友よ。どうして今日のパンを買って行かないのかね?」
 漁師のアブドッラーは、朝から自分の身に起こったこと、家族が必要とする食べ物を買うお金がないのだということを語りました。
 そして漁師のアブドッラーはパン屋に言いました。
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陸のアブドッラーと海のアプドッラー(1) [千一夜物語]

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 千一夜のうちのある夜、シャハラザードはシャフリヤール王の前に座って語りました。「幸多く聡明な王様、このように聞き及んでおります。
 一人の漁師がおりまして、名をアブドッラーと申しました。養うべき家族が多く、貧しい暮らしをしておりました。毎日海岸に出ては網を打って、子ども達や奥さんのために日々の糧を得ておりました。
 ある日のこと、夜明けに目を覚ましたこの漁師は、お清めとお祈りを行いました。そこへ一番上の娘が来て、お母さんが赤ちゃんを産んだことを伝えました。漁師は主を讃え、網を持って海へと出かけました。この幸せの為に家族が必要とするものを夕方には持ち帰るために。
漁師は海へと網を投げながら言いました。「神の恵みにおいて、そして生まれたばかりの息子の幸運において」
 しばらく待ち、網が重くなったので・・・幸運を喜びながら・・・網を引きました。ところが、一匹の魚もかかってはおりません。そこには石や海藻がひっかかっているばかりでした。気持ちが沈み、悲しくなりましたが、こう言うのでした。「神より他に何の威も力もないのだ」
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