陸のアブドッラーと海のアプドッラー(4) [千一夜物語]
漁師はこんな状態が40日続きました。海に出かけては何度も何度も網を投げ入れますが、石と海藻の他何もかかりません。
41日目、いつものように目を覚ました漁師は悲しみにくれていました。毎日夕方になるとパン屋のところへ行って、欲しいだけのパンとお金をもらうのに、パン屋は微笑んで歓迎してくれるのです。漁師は1時間も悲しみにくれながら過ごしていました。そこへ奥さんがやって来て、母親のように慰めてくれながら言いました。
「神様の手にゆだねましょう。今日神様が魚を与えてくだされば、今までしてくださったことのお礼にパン屋さんに全て差し上げましょう」
漁師は奥さんに言いました。
「神のご意思ならそうしよう」
漁師は急いで海へと出かけ、パン屋に借りたものを返すために魚を与えてくださいますようにと神に祈りながら網を打ちました。
やがて網が重くなったのを感じ「また石と草だろう・・・」と言いました。
網を開いて見ると、突然、人の姿をしたものが現れました。それは頭を動かして漁師を見ると、彼に向かって笑ったのです。
漁師はこの男を見て怖くて震え上がり、網を海岸に放り投げたまま、すぐに逃げ出しました。
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